2020年の日本人 [未来予想]
2020年の日本人
いままで、労働者にとってもよいと思われていた終身雇用制度。
じつは、経営者にとっても、企業の思う方向に人材を育てるために都合の良い制度であった。
終身雇用制度は、勤続年数がその給料に繁栄するため、学校を出て、そのときの
流行や企業の大きさで会社や仕事を決めてしまうことになる。
個人の適正や能力などを考えずに仕事をしがちな制度でもあった。
そのため、自分に合わない仕事でも定年まで我慢して働いてきたのが
少し前までの日本人だった。
現在は、経済の不調もあり、リストラなどで終身雇用制度は崩壊しているが
新しい受け皿となる仕事もないような状態だ。
この状態は、すでに1980年代に日本のような状態を向かえ、例えばIBMが
大型コンピューターからパースナルコンピュータに変わる過程で、大規模なリストラを
おこない、それが、シリコンバレーの発展につながった。
日本は、終身雇用のほかに、特徴的だったのは、貯蓄の高さ、機械化率の高さ、
労働時間の長さなどで、80年代までの経済発展があった。
それにより、安くて故障の少ない製品を売り、発展してきたのが日本経済だと
著者は、言う。
今後2020年に向けて著者の意見は、
1)需要の絞りこみ ある特定の用途における需要をどれだけ多く自分の製品に
引き付けるかという方向への転換。
普及品からノウハウや熟練を取り入れた高級品への転換。
2)日本の賃金は、欧米に比べて安いので(日本を100とするとアメリカ129、ドイツ158、フランス124)
長時間働かないといけなかった。高齢者になったら働かなくてすむシステムにする。
3)日本は、高生産、高収益の産業分野に集約特化するというが、労働人口が多すぎる。
低生産、低収益の分野でも生産性の向上や収益率の向上をはからないと
失業率が増加する。
4)研究開発分野が広すぎる。
日本人の得意な分野にしぼり、かつ日本人研究者だけでなくグローバルな人材活用が
必要。
5)地方分権化が進めば、都市は高齢化で税率が高くなり、若者が地方都市へ移る人も出てくる。
6)国民所得ベースの労働生産性の上昇率が5.1%以上であることが日本人が引き続き
豊であることの条件。
しかし、GDPは下がっている方向なので、ストックの管理が必要。
ストックの管理とは、過大な設備投資を抑えて、国民の所得を伸ばす方向に
する。
7)生活コストが高い、内外価格差が大きい、住宅コストが高い。
そして社会保障費の負担割合が2005年に比べて2020年には12%増加する(15.3%→27.1%)
高齢者向けの住宅を社会ストックとして負担するなどの政策は必要。
8)企業と政府は、賃金と労働時間を努力する。
まだゆとりのある今、個人は、金利と金融資産の活用を考える。
また時間を過ごすのお金のかからない街づくりをいかすべき。
著者の考えを整理し考えると
いずれにしても供出側の負担を考えると、適切な高齢者対策が採られても
高齢者の生活水準はさがる。
個人としてできることは、
自分で投資の考え方を含め日本人は、努力すべきだ。
2020年の日本人
2007年6月22日 1版1刷
著 者 松谷明彦
発行所 日本経済新聞出版社
254ページ
¥1800E
2020年の日本人―人口減少時代をどう生きる
まえがき 1
第一章 日本人の働き方
1 どのように働くか 13
自分に合わない働き方をしてきた日本人 13
就業パターンが多様化する 16
賃金格差も縮小する 20
働き方が多様化する 24
ライフスタイルも多様化する 26
2 誰のために働くか 30
低賃金が競争力をもたらした 30
戦前から高度成長期、誰が得をしたか 34
この四半世紀、誰が得をしたか 39
薄利多売的経営手法の終焉 45
労働者一人当たり付加価値の最大化 47
マイナスのスケールメリットをどうするか 50
製品の「熟成」による高価格化 53
投資偏重の経済運営 56
高い国民貯蓄率を生む仕組み 58
消費を軸とした経済運営への転換 60
カギ握る価値観の転換 64
3 誰が働くのか 67
働き過ぎの日本人 67
急速に縮小する労働力 70
二割減となる総労働時間 73
日本経済が縮小する 75
経済成長と景気循環を巡る誤解 78
労働力が高齢化する 81
機械力から人間力へ 86
高齢になったら働かなくて済む社会を 90
4 外国人とどう働くか 92
現行モデルの延命のための外国人労働力の活用 92
外国人労働力活用論の非現実性 95
外国人労働力の活用は後世代への負担の移転 97
社会的サービスをどうするのか 100
産業構造の高度化における日本とスウェーデンの違い 103
アジアはいつまでも日本の下請けではない 107
日本市場をどう国際化するか 110
問題は日本人だけでの研究開発にある 112
第二章 日本人の住まい方
1 若い人が分散する 115
なぜ集落が消えるのか 115
日本人の選択が過疎を生んだ 118
経済が流れを変える 123
急ぎ過ぎた地方制度改革 126
高齢化が流れを変える 128
2 どこと手を結ぶのか 132
どこからみた時間距離の短縮か 132
不可欠な地方地域自身の能動的取り組み 136
分業による地方地域間の連携 138
分業の効果 140
地方広域経済圏と地域ネットワーク 143
3 何をつくるのか 145
製造業が地域経済の基本 145
変わる観光需要 148
地域に人を呼ぶべきか 152
4 地域をどうするか 156
公共事業は何をもたらしたか 156
地方製造業の衰微を加速した公共事業 159
農業の活用 162
持続可能な生活圏 165
残す集落、消える集落 169
5 都市をどうするか 171
今、都市に何が起きているか 171
都市機能を維持できるか 174
労働力に何が起きているか 178
環境に何が起きるか 181
内なる再開発 185
第三章 日本人の過ごし方
1 経済成長の必要はない 191
日本人は今より豊かになれる 191
成長政策は格差を拡大する 196
大切なのは国民所得 201
日本社会にはまだ「ゆとり」がある 206
2 年金制度をどう続けるのか 211
日本だけが年金が立ち行かなくなる 211
出生率の向上はむずかしい 216
年金制度を続けるべきか 221
生活コストの高さも問題 225
年金の現状と見通し 227
フローからストックヘ 229
3 財政をどう立て直すのか 233
なぜ財政は破局に至ったのか 233
増税では打開できない 237
財政支出を削減するしか方法はない 239
増税の必要はない 242
4 長寿社会を生きる 244
社会福祉から福祉へ 244
時間軸を長く 249
二つの人生 249
あとがき 253
〈著者紹介〉
松谷明彦(まつたに・あきひこ)
政策研究大学院大学教授。
1945年生まれ、大阪市出身。
東京大学経済学部経済学科・同経営学科卒業。
大蔵省主計局主計官、大臣官房審議官などを歴任。
1997年より現職。
2004年東京大学より博士(工学)の学位取得。
専門はマクロ経済学、社会基盤学、財政学。
〈主な著書〉
『人口減少社会の設計』(共著、中公新書、2002年)
『「人口減少経済」の新しい公式』(日本経済新聞社、2004年)
2011-05-29 19:00
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